読書:シュレディンガーの猫を正しく知ればこの宇宙はきみのもの上

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シュレディンガーの世界をのぞいてみたくて

先日、ピアノ教室の先生が書いたエッセイ本を読んだ際、精神世界・スピリチュアル系の本を多く扱う明窓出版の存在を知りました。その中で「いつか読もう」と心に残っていたのが、シュレディンガーに関する一冊です。

シュレディンガーといえば、理系大学生なら誰もが思い浮かべる波動方程式。電子や光子が“波として振る舞う”姿を記述する方程式ですが、高校では習わない微分方程式や線形代数が使われるため、一般にはなかなか触れる機会がありません。
そして有名な「シュレディンガーの猫」。量子力学の不思議さを例えるために彼自身が考案した思考実験です。

保江邦夫先生 × さとうみつろうさんの対話で進む、量子の物語

今回読んだ本は、物理学者の保江先生が、ボーアやマクスウェルといった歴史上の物理学者たちのエピソードを交えながら語っていくインタビュー形式の内容でした。
量子論だけでなく古典物理まで深く理解している先生の語り口のおかげで、難しいはずの話がどこかあたたかく、親しみやすいのです。

読み始めは意外にも「」の話から。
人体の大半を占める水分子、DNAの二重らせんを支えている周囲の水、そして結合水(構造水)という概念。これは物質の内部にがっちり組み込まれていて、簡単には外に出てこない特別な水のことです。

この結合水が実験的に観測できるようになり、研究が進んだのは2000年代に入ってからのことだそうです。さとうさん曰く、分子生物学の福岡伸一先生の『生物と無生物の間』を超える話だと感じたほど。

水から量子へ、そして日常の話へ

本はここから一気に量子や素粒子の領域へ。急に専門的な世界へ放り込まれますが、時折出てくる日常とつながる話題に、ほっと息をつけます。

  • 「正」と「死」の状態は何で分かれるのか(=結合水の放出)
  • 岩盤浴や海洋深層水はなぜ体に良いと言われるのか
  • 日本人とキリスト教圏での人間観の違い(人間は動物か、それとも特別な存在か?)

量子論の話と生活に根ざしたテーマが自然に絡み合い、まるで旅をしているようでした。

最終章で再び訪れる“分かりやすさ”

最後のパート、「二重スリット実験の縞模様が意味するもの」に辿り着くと、一気に霧が晴れるように話が分かりやすくなります。

  • 電子は波でもあり粒子でもある
  • シュレディンガーは「生命とは何か?」をどう考えていたのか
  • そしてまさかの——
    京都駅の在来線改札口にも“二重スリット”がある!?

量子力学の象徴ともいえる二重スリット実験を、京都駅という日常の風景に結びつけて語られると、途端に親しみやすく、ぐっと身近に感じられます。

今度京都駅に行ったら…

この本を読み終えた今、京都駅に行ったら、在来線の二重スリット(=通路)を上からそっと眺めてみたい気持ちになりました。
電子が描く縞模様のように、人の流れにも何か“波”が見えるのかもしれません。

量子力学は難しい。でも、「ちょっと面白い」から始めてもいいんだと気づかせてくれる一冊でした。


保江邦夫 さとうみつろう(シュレディンガーの猫を正しく知ればこの宇宙はきみのもの上)(明窓出版)

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