📘『幸せな仕事はどこにある』を読んで
―「やりたいこと」とマーケティングはつながっていた―
「幸せな仕事はどこにある」。
書店でこのタイトルを見たとき、思わず手に取ってしまいました。
いかにも自己啓発書のような響きです。
ところが副題を見ると、
「本当の『やりたいこと』が見つかるハカセのマーケティング講義」
とあります。
どうやら単なる自己啓発ではなく、マーケティングの考え方を通して「仕事の価値」を考える本のようです。
実際に読んでみると、これはとても分かりやすいマーケティングの本でした。
自分なりに整理すると、こんな内容でした。
本のコンセプト:やりたいこと × マーケティング
本書の出発点はシンプルです。
- 本当にやりたいことを見つける
- 個性を磨くことは「差別化」
- 誰かの役に立つことは「ニーズ」
つまり、
「好きなこと」と「人の役に立つこと」を結びつけるのがマーケティング
という考え方です。
1 差別化:まず同じ土俵に立つ
差別化というと、
「他と違うことをする」と思いがちです。
しかしこの本では逆のことを言います。
まずは同じグループに入ること。
- Frame of Reference:どのグループか
- Point of Parity:同質化要素
つまり、
同じ土俵に上がらないと、違いを差別化にできない
というわけです。
一見非効率に見えても、実は合理的なのです。
2 品質:すべてをアピールしてはいけない
品質にも種類があります。
① 一元的品質
使いやすさなど、満足度を直接上げる要素
② 魅力的品質
なくても困らないが、あると嬉しい
③ 当たり前品質
ないと不満になるが、あっても評価されない
④ 逆品質
やりすぎると逆効果
⑤ 無関心品質
誰も気にしていない
ここで大事なポイント。
「備えていること」と「訴求すること」は違う
品質は時代によって変化します。
何をアピールするかを見誤ると、マーケティングは失敗します。
3 目立つ①:思い出してもらえるか
マーケティングで重要なのは、
思い出されること。
ここで登場するのが
サリエンス(Salience)=目立ち度
そして
物理的入手可能性 × 心理的入手可能性
です。
- 店で買える(物理)
- 思い出してもらえる(心理)
この2つが互いに強化し合います。
広告の役割は、
ブランドとキーワードの結びつきを作ること
なのです。
4 目立つ②:カテゴリーのリーダー
ブランドの強さは、
一番優れているかどうかではない
と言います。
重要なのは
最初に思い出されるブランド
たとえば、
- 「日本一登山者が多い山」
というサブカテゴリーを作れば、
その分野のリーダーになれます。
つまり、
カテゴリーを作った者が勝つ。
5 伝える:エンコーディング
コミュニケーションは
メッセージ
↓
解釈(デコード)
↓
ノイズ
↓
フィードバック
という流れで成立します。
だから重要なのは
エンコーディング(伝え方)
です。
- 平易な言葉
- ゆっくり話す
- 誰でも理解できる表現
つまり、
分かりやすさは技術
なのです。
6 マーケティングの全体像
マーケティングとは何か。
本書ではこう定義されています。
価値を
- 定義する
- 創造する
- 伝える
重要なのは
「顧客にとっての価値」を想像すること
その価値は
同質化要素+差別化要素
で作られます。
7 パーパス:ブランドの存在理由
最近よく聞く言葉。
Purpose(パーパス)
ブランドの存在理由です。
ここで重要なのは
ビッグ・アイデア
- これまで聞いたことがない
- 人を惹きつける理念
パーパスは
理想の自分 × 社会課題
が交わるところに生まれます。
そして理念は、
達成するものではなく、進み続けるもの
なのです。
8 心を動かす伝え方
コミュニケーションは
- 一対一
- 一対多
で全く違います。
多くの人に伝える場合は、
ストレートトークは通用しない。
ポイントは
FABV
- Feature(特徴)
- Advantage(優位性)
- Benefit(便益)
- Value(価値)
さらに
- 文章
- イメージ
- 映像
- 数値
など媒体の選び方も重要です。
9 必要とされる存在
最後に出てくる重要な話。
× 欲しい人がいる
○ 必要とする人がいる
ここで登場する概念。
- ニーズ:根本の欲求
- ウォンツ:欲しいもの
- デマンド:実際に買う状況
そして、
デマンドを作るのがマーケティング
なのです。
読んで感じたこと
この本は、
「やりたいことを見つける本」
というより、
「価値をどう作るか」を教えてくれる本
でした。
そして印象的だったのは、
好きなことだけでは仕事にならない
でも、誰かのニーズと結びつくと価値になる
という視点です。
「幸せな仕事」とは、
やりたいこと × 誰かの役に立つこと
が重なった場所にあるのかもしれません。
井上大輔(2024)幸せな仕事はどこにある(東洋経済)


