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読書:ChatGPT「超」勉強法

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2025年8月にChatGPTが4oから5にアップデートされました(日本経済新聞の記事になっていて気がつきました):

ChatGPT-4oとの違い:「大学生」と「大学院生」のような関係?

その比喩はある意味で的を射ていますが、実際には以下のような違いがあります:

GPT-4o の特徴

  • マルチモーダル能力:テキスト、画像、音声に対応し、柔軟な処理が可能でした。
  • 表現力・親しみやすさ:豊かな語り口と表現力があり、親しみを感じる応答が得意でした。

GPT-5 の進化ポイント

  • 高度な推論・正確性:複雑な課題への対応力が向上し、誤認(ハルシネーション)も抑制されています。
  • 長文対応力:270,000超の入力トークン、128,000トークンの出力生成が可能になり、長く深い対話が可能に。
  • 自動モデル選択:処理内容に応じて、標準版/ミニ版/ナノ版を自動的に使い分け、ユーザーによる操作は不要。
  • セキュリティと安全強化:不適切な応答やデセプション(誤誘導)への耐性が高められています。
  • タスク統合性の向上:例えば Gmail や Google カレンダーとの統合など、日常の業務支援機能も強化。
  • コーディング性能の大幅改善:Web開発/システム/データサイエンスなど、複数分野で GPT‑4o を大きく上回る成果が報告されています。
  • トーン・印象の変化:より専門的で効率的な応答になった一方、以前のモデルのような親しみや柔らかさが減り、「少し冷たい」と感じるユーザーもいるようです
ChatGPT-5 2025.8.23

精力的に本を書かれている経済学者の野口さんの著書「ChatGPT「超」勉強法」は、2023年出版の「超「超」勉強法」の続編です。全文公開されている「はじめに」のはじめの方に「丸暗記法がChatGPTによって容易になる」と書かれています。どういうことでしょうか?

この本から学べることは実に多いのですが、ChatGPTが勉強革命を引き起こすことが肝です。肝を整理しておくと、
・本は著者の問題意識で書かれている(←情報のプッシュ)、しかしChatGPTはあなたが知りたいことを教えてくれる(←情報のプル)。好奇心を満たされると楽しいと感じるレベルは段違い。
・高いお金を払って得られる家庭教師からの情報のプルと比べても段違い。ChatGPTを活用する独学がとてつもなく面白くなる(勉強が本来は楽しいものであることを実感できます😀)

ChatGPTを使いこなすためのより実践的な内容、例えば誤った答えを避けるためのノウハウ(プロンプトの工夫*や、Wolframのようなプラグインの活用)も書かれているのですが、ChatGPT活用の本質である、ChatGPTという魔法の玉手箱による勉強革命に学べることにあると言っても過言ではありません。例えば外国語の勉強で、私の例で言うと、丸暗記する教材(英文)を探し出す時、ChatGPTと何度かのやりとりをしたのち、トヨタの社長が米国の大学の卒業式で行ったメモリアルスピーチの全文を教えてもらうことができました。基本的なフレーズとしては、
・『本題に入りますね。Let me get right to the point…』
・『もっと重要な事について話しましょう。… Let’s talk about more important things…』
があります。加えて、下記のような、ユーモアを交えたセリフも丸暗記すると英語が流暢にな理想です。
・『この記念すべき瞬間をどう祝うつもりですか… つまり、今夜のパーティーはどれほど盛り上がるのでしょうか?そして何より、私も参加できますか?Like how you plan to celebrate this momentous occasion… I mean, how wild is tonight’s party going to get? And more importantly, can I come?』
・『他人を鼓舞する人になりましょう。良いグローバル市民になりましょう。環境や地球、そして世界中の他の地域で起こっていることに興味を持ちましょう。クールであることにこだわらず、温かい人間になりましょう。自分が何のために戦うのかを決断しましょう。Be a person that inspires others. Be a good global citizen. Care about the environment, the planet…about what’s happening in other parts of the world. Don’t worry about being cool…be warm. Decide what you stand for.』

この本には、外国語、数学、国語、社会、理科、歴史、科目ごとにChatGPTの利用の本質に触れて、魔法の玉手箱を使いこなすポイントが書かれています。音楽、美術、家庭科などの芸術や生活についてはどうなるのか興味が湧いてきました:

🎶 音楽

  • AIができること
    • 作曲の補助(コード進行やメロディ案の生成)
    • 楽譜の自動作成・編曲提案
    • 音源を合成して模範演奏を提示
  • AIでは補えない部分
    • 楽器演奏の身体的スキル習得(指の動き、呼吸法など)
    • 音楽表現における「感情の込め方」やアンサンブルでの相互作用
    • 舞台での緊張感、仲間と共に作り上げる体験
      ➡️ 教師の役割は、AIを活用した作曲・練習補助を取り入れつつ、演奏体験や表現の共有を支援する方向へ進むと考えられます。

🎨 美術

  • AIができること
    • 画像生成による作例提示(スタイル模倣、色彩のアイデア出し)
    • デザインのバリエーションを瞬時に比較
  • AIでは補えない部分
    • 絵具の手触りや彫刻の素材感といった「物質的経験」
    • 作品を作る中での偶然の発見や「失敗から学ぶ」経験
    • 作品に込めた意味を対話的に深めること
      ➡️ 教師は、AIが生成した作品をどう批評し、そこから「自分の作品」へと昇華させるかを導く存在になります。

🍳 家庭科(生活科)

  • AIができること
    • レシピ提案や栄養バランス計算
    • 家計管理のシミュレーション
    • 家事の効率化アイデア
  • AIでは補えない部分
    • 実際に料理を作る手順の習得(火加減、包丁さばきなど)
    • 布や衣類を扱う感覚的スキル(裁縫、アイロンなど)
    • 家族や仲間と一緒に食卓を囲む文化的・社会的な価値
      ➡️ 教師は、生活スキルを「実体験」として身につけさせる役割を担います。AIは補助的な情報提供にとどまり、実践を通じた学びは教師が不可欠です。

🌱 まとめ

  • 知識やアイデアの提供はAIが得意。
  • 身体感覚・共同体験・感情共有はAIが不得意で、教師が不可欠。
  • 芸術や生活系科目では、AIは「補助教材」や「発想のきっかけ」にとどまり、教師の存在はむしろ重要度を増すと考えられます。
ChatGPT5 2025.8.23

ChatGPTを活用した勉強力の大躍進ポイントを理解すればするほど、勉強革命が起きることは間違いなさそうです。

ChatGPT以前とChatGPT以後で、生成AIによる知の独占の破壊が教育の在り方をどう変えるかについて、利用コストと結びつけて書かれていました。検索エンジンと異なり、ターゲッティング広告の仕掛けが未だない生成AIツールの利用コストは今後、どうなるのでしょうか?生成AIツールを提供している企業が事前学習のコストとして、例えばWikipediaに寄付やパートナーシップの形で資金支援するといったことが起きるのだろうか、といったことを考えさせられます。

最後に、学校の最終的役割として、ChatGPTからは学ぶことのできない社会生活の訓練がある、と書かれていました。学校には、異なる背景や価値観を持つ生徒たちの交流といった人と人とのコミュニケーションがあります。学校の例として、ハリーポッターのホグワーツ校が取り上げられていました。

野口さんは日本には全寮制の学校がほとんどない事を警告しています。 2025年に報道された、NHKが取材した国内最大級の立命館アジア太平洋大学の72時間の特番を思い出しました(気になるNHKさんのブログ記事を参照)。日本初の本格的な国際大学として2000年に開校、当時の関係者の方から話を聞いてから四半世紀。単なる国際交流や外国人受け入れではなく、多文化共生を体現し、アジア太平洋地域から世界の未来を創造する大学。長い年月をかけてビジョンを持って取り組んできた成果ではないでしょうか。

人生100年。これからはリスキング(再教育)が問われる時代が来ます。ChatGPTの登場により、コストをかけずに独学でリスキングできる土台が醸成されつつあります。野口さんは最後にこう述べていました:『社会に出て以降の勉強において、ChatGPTをどのように使えるかが、重要な課題だ。リスキングに関わるこうした問題については、別の機会に論じることとしたい。』

*プロンプトの工夫:いきなり質問するゼロショット・プロンプティングよりも、幾つかの情報を事前に与えて質問するフューショット・プロンプティングが有効です。記事「プチChatGPT修行、一まとめのプロンプトで全部リクエストしてみる」を参考にしてください。

野口悠紀雄、ChatGPT「超」勉強法(2024)、PRESIDENT STORE

ChatGPT「超」勉強法
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