楽譜が読めなくても名曲を弾ける?小さな町のピアノ教室からの気づき
先日、「楽譜が読めなくても美しく名曲が弾ける秘訣」というタイトルに惹かれて本を手に取りました。ピアノのレッスン教本かと思いきや、実は町の小さなピアノ教室を開いた杉野さんによるエッセイ。そこには、楽譜やテクニックの話以上に「どうして教室を始めたのか」「どんな思いや試行錯誤があったのか」というストーリーが綴られていました。
ブログやNoteには「ピアノ教室を開業しました」という体験談が多く見つかります(例えば「ピアノの先生の独り言♪#45楽器店講師からピアノ教室開業への道。」))。しかし、純粋な自伝のように、細かい過程を一冊にまとめて出版されたものは意外と少ないのではないでしょうか。
出版元は意外な出版社、明窓出版
さらに面白いのは、この本を出しているのが 明窓出版 だということ。平成元年創業で、「和のこころと健康を育む」ことをテーマに掲げ、精神世界・スピリチュアル・健康・日本の伝統・ヒーリングといったジャンルの本を数多く手がけてきた出版社です。
そんな中で、この「純粋にピアノレッスンの立ち上げ」を描いた本が刊行されていることに、ちょっと感心しました。健康?ヒーリング?…そのどれにも属さないようでいて、音楽を通じて人を癒す、という意味では出版社の方向性とつながるのかもしれません。
『エリーゼのために』に込められた魅力
そんなエッセイを読みながら、誰もが耳にしたことのある名曲『エリーゼのために』を久しぶりに聴いてみました。ドイツの作曲家・ベートーヴェンが手がけたこの曲は、軽快で印象的なメロディーが繰り返され、クラシック音楽に詳しくなくても口ずさめるほど親しまれています。
NHK「クラッシックTV」で進行を務めるピアニスト・清塚さんのアルバム「ぐっすり眠れるピアノ」にも収録されており、リラックスや睡眠導入の音楽としても人気。演奏の難易度は比較的やさしく、初心者から中級者までの練習曲としても定番です。
ピアノと「物語」を味わう時間
杉野さんのエッセイを通じて感じたのは、楽譜の読み方や技術以上に「音楽をどう伝えたいか」「どんな気持ちで弾くか」が大切だということ。名曲を弾ける秘訣は、もしかすると「楽譜を完璧に読む力」ではなく、「曲に込められた物語をどう自分の音にのせるか」にあるのかもしれません。
折角なので、半年で『エリーゼの為に』が弾けるようになる、精神論的ポイントを整理しておきます。
第1章 職人ピアノ教師を目指して
・謳い文句:楽譜が読めなくても大丈夫
・CDで流れるほど速く弾かなくても十分美しく、弾いて楽しめる
・ゆっくりでも指が動かないのであれば、それはどこかに力が入っているのが原因なので、その力を抜けば指は面白いように動く
・息まで止めていないか?普通に呼吸をしながら
第2章 ピアノ教室開設準備
・音符にドレミを場合によっては付ける
第3章 レッスン光景
・お稽古ごとから得意技へ
・ピアノの上にキャンディー🍬の瓶🫙
・レッスンは音楽を一緒に作り上げる作業
・演奏の録音、録画
・クラッシクの基礎(好きな曲)と好きなポップスを練習する
・手に負えないと思える難解な曲でも片手でゆっくり練習していくうちに望み通りのメロディーを生み出すことが出来た
・感情を込めて:力の入れ方や音色の違い、タッチを研究
・途中で止めないと、また楽しみが見えてくる
(眠たくても起きなきゃいけないときには起きる。少しでも食べなくちゃいけないから食べるのと似ている)
・目を見ないで楽譜を見る
第4章 発表会
・ステージで頑張っている姿、きれいな音楽を奏でる姿を誰よりも愛する人に見てほしいという出演者は眩しい
第5章 ゴールドコーストの幼稚園でのピアノレッスン
・キーボードの音をよく聴く
・曲の雰囲気、速さを感じ取る
・歌の言葉をはっきり発音し、意味を考えながら、音楽に合わせて繰り返し練習する
あとがき
・歌を歌う、ピアノを弾く、それは世界を作ること
・努力して練習し、自分の感性を加えて、最初から最後まで適度に緊張し、適度に恍惚となって曲を仕上げていくと、一つの世界が出来上がる。
この曲には「Für Elise(エリーゼのために)」という献呈タイトルがついていますが、この「エリーゼ」が誰を指しているのかは今でも謎とされ、諸説あります
ChatGPT-5 2025.9.27
次に『エリーゼのために』を聴くときは、そんな背景も一緒に味わってみると、より一層心に響くのではないでしょうか。
YouTubeをのぞけば、ジャズ風アレンジなど、多彩なバリエーションがアップされていて、同じ曲でも表情がガラリと変わるのが面白いところです。清塚さんのアレンジ演奏のリンクも貼っておきました。ぜひ、自分なりの「エリーゼのために」を探してみてください。
杉野照子(2003)ピアノレッスン 半年で『エリーゼの為に』(明窓出版)