人文建築家ユ・ヒョンジュンが語る、ポストコロナ時代の「空間の未来」
韓国で人気の人文建築家、ユ・ヒョンジュン。
“建物をつくる人” というより、“人間の営みの物語” を建築する人。
今回読んだ本は、新型コロナのピークに書かれた、ポストコロナ時代の都市文明論です。
結構難しそうなテーマなのですが、日本語訳は読みやすくまとまっていて、各章もコンパクト。意外とスイスイ読めました。
日本と韓国の都市は似ている?似ていない?
序文で面白かったのはここ。
| 似ている点 | 違う点 |
|---|---|
| 稲作・集団労働などの文化的遺伝子 | 都市デザイン(地震国の低層 vs 韓国の高層標準化) |
韓国では急速な都市化の中で「ハンガン沿いの高層マンション」が標準化。しかし、そのデザインは似通い、多様性が乏しい。
ユ氏は、この違いを「人と街の関係性」から読み解きます。
そして…
彼が一番好きな日本アニメは「天空の城ラピュタ」と「天気の子」😄
(ここも人文建築家的な“物語”の匂いがしますよね…)
コロナは「空間」を変えた。空間は「社会」を変える。
本の冒頭にはこう書かれています。
- コウモリはウイルスと共存、ヒトは排除
- 感染症は空間を変え、空間は社会を変える
- 未来予測は、要素の1つが外れただけで全部ズレる
アルビン・トフラーの「electronic cottage」予測が外れた理由は、
人間そのものの “権力欲求” や “群れで集まる習性” が見えていなかったから。
新型コロナの時代、私たちは「ウイルスにさらされる恐怖」を前に、生存欲求がむき出しになりました。
古代エジプトでは、ナイル川の氾濫を正しく予測できる人が生き残ったように、「環境を読み解く知恵」を持つことが生死を分けることがある。
では、コロナを経験した世界はどう変わるのか?
コロナを乗り越えた私たちの世界は、これからどんなふうに変わっていくのか?
私たちは、どんな“空間”の中を生きていくことになるのか?
その未来の物語「予測の物語」を描こうとするのが、この本です。
例えばこんな未来
1章や2章を例にすると…
1章:庭のようなバルコニー
窓側にキッチンが移動し
「小さな個人の庭的バルコニー」を持つマンションへ。
2章:教会空間は、平日の市民が使う場所へ
教会は信者のためだけではなく
小さな自習室・子どものオンライン授業・シェアオフィス空間へ。
11章まで続く「空間の未来予測」
- 教育は千人千通りへ
- オフィスはどうなる?
- 自動運転物流トンネルが“地上に公園を戻す”
- 若者が“見向きもされない場所”に物語を生むヒップチロ空間
…など、気になるテーマがズラリ。
会社員視点では、バラバラな個々人を結ぶものは「企業哲学」なんだと再確認させられます。
読んでいてふと…
私の近所にも、Googleマップで検索に全然出てこないけど
昼の短い時間だけ開店してる小さなコーヒーショップがあります。
“探さないと見つからない場所”(隠れ家) って、そこに行くまでの過程そのものが物語になる。
この本を読んで、それを思い出しました。
今度、行ってみよう。
まとめ
- 未来は “やってくる” ものではなく “創造する” もの。
- 自分の住む町を、まったく新しい視線で見直せる本でした。
次は『都市は何によってできているのか(パク・ソンウォン)』も読んでみたい。
ユヒョンジュン(2023)空間の未来(クオン)
